作り手の声:陶芸家 徳永榮二郎さん vol.2(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて2023818日から29日まで開催中の徳永榮二郎 作品展『邂逅カイコウまだ見ぬ景色を求めて』。磁器産地の中心・有田で、土ものの作品を作り続ける徳永さんは、炭化焼成を得意とし、多様な土と釉薬を用いて独自の表現を追求しています。HULS Gallery Tokyoでは3回目となる今回の企画展に合わせて、作品の見どころや新作についてお話を伺いました。

*前回の企画展でのインタビューはこちら

- 今回の展示内容について、テーマやご自身の中で意識されていたことがあれば教えてください。

ずっと炭化焼成※1 による釉薬の窯変を自分の個性としてやっていますが、窯変というのは焼成時の条件によって景色が大きく変わるので、自分が想像していたよりすごく良いものができることもあります。そういうまだ見たことがないような窯変を追求していくという意味で、展示タイトルの「邂逅」が今回のテーマになりました。

1 施釉後の器体を入れた耐火度の高い匣鉢さやの中に炭を入れ、蓋をして焼成する技法。

あとは、HULSさんからの依頼もあり、普段使いの器をたくさん出しています。使いやすさや持ったときにしっくりくるフォルムを意識して作りました。プロパー(通常の焼成)の器は前回の展示よりも種類を増やして、夏なので青みがかった涼しげな色を入れたり、いろいろな釉薬から選べるようにしました。

プロパー作品と炭化作品で、同じ釉薬を使った作品もいくつか出していただいていますが、雰囲気が変わって面白いですね。こうした作品は多いのでしょうか。

多いです。プロパー作品で使っている釉薬を炭化で焼いたらどうなるかなという実験を繰り返して、今の炭化作品が作られてきているので。焼き方が違うと、色や風合い、窯変の景色がまったく別物になります。プロパーはさっぱりしていますが、炭化は深みがあります。そこが炭化焼成の面白さですね。

- 特に注目してほしい作品はありますか。

《龍門白嶺 俎板まないた皿》は、今回チャレンジした作品です。大きいので温度が急激に下がったときに割れやすいのと、龍門白嶺の釉薬は色味がうまく出ないことも多いのですが、今までの経験をもとに釉薬の量やかけ方を感覚で調整しながらやってみたら、綺麗な景色が出ました。

- 新作の旅茶碗についてもお聞かせください。

抹茶碗は以前から作っていましたが、最近は野点などで趣味としてお茶を楽しまれている方もいるので、もっとカジュアルに、巾着袋に入れて持ち運びできるくらいの小ぶりな茶碗を作ってみたいなと思っていました。それを実現したのが、今回の旅茶碗です。若い方でも手に取りやすくなるといいなという思いもあります。

- これから挑戦してみたいことはありますか。

スタイルはある程度決まっているので、いかにインパクトのある窯変を出せるかというところですね。何となくこういう感じになるだろうなという予想はできますが、いまだに操れているようで操れていない部分が結構あるんです。あとは、海外で個展をやりたいです。SNSでは海外の方からリアクションをもらうことも多いので、いずれいろいろな国でやってみたいですね。

- 最後に、お客様へメッセージをお願いします。

使い勝手を考えたものづくりをしているので、たくさん使っていただきたいです。そして、使っていくうちに器の景色がどんどん変化していくところを楽しんでほしいなと思います。

徳永榮二郎さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/eijirotokunaga