作り手の声:陶芸家 樽田裕史さん vol.2(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて2024817日から31日まで開催中の樽田裕史 作品展 『ヒカリの形』。樽田さんは愛知県瀬戸市にて、流れるようなラインの透かし彫りに清々しい青白磁釉が織りなす「線の蛍手」を作り続けています。HULS Gallery Tokyoでは2回目となる今回の企画展に合わせて、作品の見どころや新作についてお話を伺いました。

*前回の企画展でのインタビューはこちら

- 本展に向けて意識されたことやテーマについてお聞かせください。

前回は(HULSでの)初めての展示で、今まで追求してきた「線の蛍手」の自己紹介的な意味合いの強い内容でしたが、今回は2回目なのと、これから海外での展示が控えていることもあり、新しいものを作りたいという気持ちがありました。ここ数年、空間を作るということを意識するようになる中で、僕の作品を「光に形を与えている」と言ってくださった方がいて。僕のやりたいこととリンクする素敵な表現だったので、「光に形を与える」をテーマに試作を行いました。今回はそのプロトタイプとともに、完成した新作を出品しているので、皆さんの反応を見てみたいなと思っています。

- 今回の新作について教えてください。

《やわらかな光》と《光ノ渦》の2つが大きな新作です。《やわらかな光》は、一本の長い線ではなく短い線をランダムに入れた作品からの派生で、「光に形を与える」というテーマで新しい表現を模索し、エッジのない彫り方に変えてみたものです。角がないだけで光の雰囲気も柔らかく見えますよね。

《光ノ渦》は、タイトルは以前から作っていた作品と一緒ですが、線に角度をつけてより渦を巻いたデザインにしました。今までは制作工程上、刃を斜めに入れすぎるとボディが歪んでしまいできなかったのですが、道具や手順を変えたことで可能になりました。技術的な面でもいろいろと研究して生まれた作品です。

- 特に注目してほしい作品や自信作はありますか。

《光ノ渦》の大きい作品は、先ほどお話しした新しいやり方で線に角度をつけたものですが、このサイズ感でできたという意味で自信作の一つです。

同じく新作の《やわらかな光》シリーズも見てほしいですし、試作段階のプロトタイプシリーズは線の入れ方を試行錯誤した過程がわかると思います。デザインとして完成した作品だけでなく、そこに至るまでの流れがわかるこうした作品を展示するのは初めてなので、注目していただきたいです。

-制作する上でこだわっていることはありますか。

光に透ける不思議さや綺麗さ、嬉しさが根源にあってここまで続けてきたので、蛍手という技法そのものがこだわりです。最近はそこからさらに発展させて、蛍手で何を表現できるか考えるようになりました。次のステップに来ているのかなと。技法としては大きく変わりませんが、自然と違いが出てきているように感じます。

- これからやってみたいことはありますか。

大きい作品には挑戦したいです。どうしてもろくろで挽いた回転体が多いので、少し崩れた形など土の可塑性を活かしたものや、平面で何かできたら面白いのではと考えています。壁に掛けられる作品とか。蛍手にこだわっていたので、光が入りにくい平面だと難しさを感じていたのですが、単純に彫っただけでも僕らしさは出せるのかなと思うようになりました。今回の新作に取り組む中で、彫り方を工夫すると違った表現ができそうという感覚も出てきたので、作品の幅を広げていきたいです。

- 最後に、お客様へメッセージをお願いします。

線の蛍手という表現の中で、新しいことに取り組んでいるので見てほしいです。季節や時間によって変化する作品の雰囲気や空気感も楽しんでもらいたいですね。特に今回の新作は完成したばかりで、その時々の光でどのように見え方が変わっていくのか僕自身もまだわからないところがあります。もし手に取っていただけたら、そうした表情の違いを感じてほしいなと思います。

樽田裕史さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/hiroshitaruta