作り手の声:ガラス作家 西山雪さん(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて202559日から21日まで開催されたガラス作家 西山雪 個展 『光に満ちて』。生まれ育った北海道を拠点とする西山さんは、宙吹きで形成し、豊かな自然や動物を生き生きと描いた作品を制作されています。HULS Gallery Tokyoでは初めてとなる今回の企画展に合わせて、見どころや新作についてお話を伺いました。

- 今回の個展に向けて意識されていたことやコンセプトについて教えてください。

ガラスなので光によって作品が生きるというのもありますが、最近制作に対する意識が変わってきて、ただ器を作って絵を描くというよりも、思いやエネルギーのような光を作品にのせるという感覚が強くなってきたことで、今回『光に満ちて』というタイトルにしました。いろいろなことをあまり難しく考えず素直に受け入れ、感じたものをよりストレートに表現することが、今の自分にはできるようになりました。以前、亡くなられた方の写真の横に私の作品を置いているというお客様がいらしたのですが、私の作品が祈りや願いの器にもなりうるということは、新しい発見でした。私も神様のような何かに守られているなと感じることが増えたので、その使い方に納得するとともに、作品を通してお客様に私の思いが届いているという手応えがありました。そういう仕事ができるのはとても幸せなことです。

アイテムとしては、振出しなど作りたいと思いながらも未着手の状態だったものを、良いタイミングなので形にしようと取り組みました。

オーナメントは、先ほどのお客様のような使い方もあると知って、器の形状にとらわれず、光を届けるという意識でもっと自由に作って良いかもしれないと思い、生まれた作品です。

- 絵柄についてはいかがでしょうか。

《花たまり 紫陽花》の紫陽花は力を入れて制作しました。今回はガラスが得意とする艶やかで瑞々しい表現が際立つ良い時期に展示させてもらえて、紫陽花は季節的にも合うモチーフだったので選びました。《なつの光》の魚は、沢登りへ行ったときに釣りをする機会があったのですが、魚が食い付いて引きがある感覚、ぬるっとしていてざらざらした手触りや体温が、今まで描いてきたエゾリスや鳥などと違って新鮮で、せっかくなので描いてみようと初めて挑戦しました。結構リアルなので、お客様の反応がさまざまで面白いです。

- 色ガラスを使った作品についてもお聞かせください。

以前に自分で色を調合していた時期があって、《碧 マヒワ》の青い色ガラスは、実はその頃に作ったものがベースになっています。透明の方がすべての色が映えるので絵付けにはベストなのですが、色ガラスはそれだけで存在感があり雰囲気も変わるので、またやってみようかなと今回引っ張り出してきました。大鉢《白花の宵》は、富山へ行ったときに他のスタッフに手伝ってもらって制作し、北海道に持ち帰って絵付けをしました。今までは全部自分で作っていましたが、他の人に手伝ってもらうと自分では出せない、思いがけない形ができたりするので面白くて。その意外性からインスピレーションを得られることもありますし、色ガラスを使うこともそうですが、これまでの枠から外れて、違うことをやってみたくて取り組んだ作品です。

- 色ガラスに絵付けするとき、透明なガラスと異なる点や気をつける点はありますか。

色の選択が一番難しいですね。透明なガラスと違って制限があり、例えば青い色ガラスに黄色や白のような明るめの色は映えますが、暗めの色を使う秋の絵を描いても色が沈んでしまいます。今回は青い色ガラスを空に見立てて、黄色いマヒワという鳥を描きました。野鳥観察をしていたとき、マヒワが大きい木に何十羽も止まっているのを見ることができて、小さくてすごく可愛かったので、その印象をそのまま描きました。

- 自信作や注目してほしい作品はありますか。

全部です(笑)。毎回「君が一番だよ」という気持ちで作っていても、実際はなかなか難しいのですが、今回はそれができたかなと。《mimosa》は少しお休みしていたのですが、カッティングした氷鉢などを久しぶりに作りました。ギャラリーのグレーの畳にも黄色がとても映えていたので、今回持ってきてよかったです。北海道は寒くてミモザが咲かないので、いつも温室に行ってスケッチや撮影をしていたのですが、出会いがあってミモザの木が家へ来たこともあり、絵付けのデザインを一から作り直しました。ミモザはずっと描いてきましたが、今回はさらにブラッシュアップされたかなと思います。

- 吹きガラスの造形で挑戦されたことはありますか。

今まではきっちりとした形を目指していたのですが、作品に光を留めるということを意識すると、もっと有機的な形の方が合うかもしれないと思いました。光のたまり方を改めて考えながら、どうしたら気持ちの良い形ができるかというのを探りました。

最後に、お客様へメッセージをお願いします。

全部が一番可愛い子たちなので、良い方に巡り会って連れて帰っていただけたらと思っています。感じ方はお客様次第だと思いますが、実物を見て、写真ではなかなか伝わらないエネルギーや空気に直接触れて、少しでもわくわくした気持ちになってくれたら嬉しいです。