作り手の声:陶芸家 鈴木大弓さん(JP ONLY)

HULS GALLERY TOKYOでは、陶芸家 鈴木大弓さんの作品のお取り扱いをスタートしました。鈴木さんは宮城県仙台市生まれ。大学在学中より作陶を始め、韓国にて修行を積んだ後、滋賀県信楽町にて独立。現在は三重県伊賀市に工房を移し、粉引をはじめ、刷毛目や三島、信楽の土を用いた焼締など、多彩な作品を制作されています。

今回は、そんな鈴木さんの陶芸家としてのルーツや現在の作陶活動についてお話を伺いました。

- 陶芸の道に入ったきっかけを教えてください。

大学の陶芸サークルです。特に器が好きだったわけではないんですが、大学2年生の終わりくらいに「このままだと大学生活遊んで終わっちゃう。何かやろう」と思って陶芸を始めたら、夢中になって抜けられなくなりました。

- 大学卒業後は韓国で修行を積んでいらっしゃいますが、韓国へ行こうと決心されたのはなぜですか。

陶芸を続けることを親に反対されたのが大きいですね。海外で弟子入りするくらいの根性があるならやってもいいという条件を出されたので。僕にとってはラッキーで、当時井戸茶碗*に興味があったこともあり、韓国に行くことにしました。

*井戸茶碗…李朝前期の朝鮮で作られた高麗茶碗の一種。

- 韓国での経験についてお聞かせください。

聞慶と慶州でそれぞれ別の先生に弟子入りし、合計1年3カ月余りの間、陶芸の基礎を中心に学びました。最初の先生は当時70歳を超えていましたが、夜中の2時から働き作品を作っていました。陶器に対する貪欲さがすごいですよね。陶芸家は手を動かしてなんぼの職業だと思い知った気がします。次の弟子入り先の先生は当時36歳でまだ若く、やりたいことばかりというわけにはいかないので注文も受けていました。大変だったと思いますが、自分の研究もコツコツやりながら真面目に仕事をしている人でした。

- 韓国での修行を終えて、日本に帰国してからのことを教えてください。

滋賀県信楽の製陶所に2年ほど勤めました。信楽を選んだのは、焼締にも興味があったからです。住み始めてすぐに、信楽の陶芸家 澤克典さんに出会いました。製陶所の仕事は分業なので、僕は釉掛けや窯詰めをしていましたが、澤さんが作家として楽しそうに自由に作陶するのをそばで見ていて、いいなあと思っていました。

- ご自身の作品づくりにはどのように取り組んでいったのですか。

澤さんのご厚意で、窯焚きを手伝いながら自分の作品を一緒に焼いてもらっていました。仕事場を貸してくれる人も紹介してくれて、少しずつ自分の作品を作れるようになったので、僕は恵まれていたなと思います。地元の人たちの中に入っていくことができてすごく楽しかったですし、ありがたかったですね。澤さんをはじめ、今付き合いのある先輩たちのことは尊敬しています。

- 鈴木さんは粉引や三島の作品を多く制作されています。それぞれの魅力はどのようなところでしょうか。

粉引も三島も粉青沙器*の仲間なので、上に塗っている化粧に色が入って変化し、育っていくところが面白いです。特に粉引は育て甲斐のある器ですね。

*粉青沙器…粉粧灰青沙器の略語。李朝時代の朝鮮を代表する陶磁器。鉄分を含む素地に白化粧を施し、透明釉をかけて焼成する技法、作品をいう。

- 窯は何を使っていますか。

薪で焚く登窯や穴窯を使っていますが、急な注文などは灯油窯で焼くこともあります。電気窯もありますよ。薪窯で焼いた作品は、並べてみると違いがわかります。例えば僕が使っている赤土は、薪が燃えるときに出る炭素に反応して土の色が大きく変わります。灰が表面に乗るから、雰囲気も良くなります。

- 土はどのようなものを使っていますか。

粉引や三島、刷毛目などは、伊賀と信楽の間の赤土を使っています。青磁は信楽の土です。釉薬は韓国の石を使っていて、韓国で修行していたときの兄弟子に送ってもらっています。志野の土は愛知県瀬戸の陶芸家の山口真人さんと一緒に掘りに行っています。志野は始めたばかりなので、山口さんにいろいろと教わっています。

- 作陶の中で大切にしていることを教えてください。

手を抜かないことです。

- 鈴木さんにとって工芸とは何でしょうか。

作品には、作家の意図ももちろん存在すると思いますが、見る側が自由に感じて考えることができるところも面白いですよね。作品をどう捉えるかはそれを見る人の自由。工芸品と捉える人もいれば美術品と捉える人もいる。それに正解不正解はないと思っています。

だから僕は工芸を意識して作品を作ってはいません。あくまで「陶器を作る人」です。

- これからどのような作品を作っていきたいですか。

ぱっと見たときに芯が通っているもの。古典にこだわってはいませんが、現代まで残ってきたものにはそれだけの良さがあると思うので、古いものの良さを残しながら新しい表現にも挑戦したいですね。素材や形は、もっといいものがないかずっと探しています。そのときは最高と思っても、後からもっとこうすればよかったって思うんですよね。まだ40歳になったばかりですし、試行錯誤しながらいろいろなことに取り組んでいきたいです。

写真:須田卓馬

鈴木大弓さんコレクションページ:https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/hiroyumisuzuki