作り手の声:陶芸家 安藤良輔さん vol.2(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて2026年6月12日から27日まで開催された安藤良輔 作品展『Forms』。日々の器としての機能を備えながら、ささやかな遊び心と愛らしさを併せ持つ安藤さんの作品は、国内外の多くのファンを魅了しています。個性豊かな表情を宿す作品を多数出品いただいた今回の企画展に合わせ、安藤さんにお話を伺いました。

*前回の企画展でのインタビューはこちら

- HULS Gallery Tokyoでは3年ぶり2回目の展示となります。今回のテーマ「Forms」について教えてください。

今回一番意識したのは、「似て非なるかたち」です。同じ型を使いながら、どれだけそこから幅を持って展開していけるかということをテーマに制作しました。同じ型を使っていても、工程を少し変えたり、型の作り方自体を工夫したりすることで、「似ているんだけど、ちょっと違う」ものが生まれます。例えばDMに載せたトゲトゲのカップは、ボディ自体は定番のカップと同じ型を使っているんですよね。底面の型だけを入れ替えている状態。通常、割型には型同士をぴったり合わせるための「ツメ」があるんですが、僕の場合はわざとそのツメを作っていません。そうすることで、底面だけを違う型に入れ替えられるようにしています。

マグカップのハンドルも、10種類くらい作っています。機能としては、どれもちゃんと指が掛かるような形状にはしているんですが、人によって「これが一番持ちやすい」「これがしっくりくる」というものが違うんですよね。展覧会では、同じボディでハンドルだけ違うものを実際に持ち比べて、自分の手に一番馴染むものを選んでもらえたらと思っています。ご夫婦やご家族で、それぞれ違うハンドルを選んで、自分用のカップをハンドルで見分けて使っていただくのも面白いかなと思います。基本的には、どこかは定型として共通の型を使っていて、一部分だけ少しずつ変えていく。今回の展示は、そういう「型の展開」で遊んだ感じです。

あとは、変形かな。例えば《石ころぐい呑み》は、型から出した後にわざと歪ませたり、口を広げたりしているんです。片口もそうですね。注ぎ口をどこまで開くか、どう削るか。同じ型から作っているんですが、そのあとにひと手間加えることで、一つひとつ違うものになっていきます。

- トゲトゲのシリーズはどのようにして生まれたのですか。

実験的に作っていたトゲの石膏型があって、それをなんとなくカップの底面に当てて鋳込んでみたら、思いのほか面白いものができたんです。偶然ですよね(笑)。僕自身が少し特徴のあるものが好きというのもあって、アクセントになりそうだと思いました。僕の作風でもある柔らかい雰囲気の器に、こういうちょっとパンクな印象を加えてみると、その相反する感じが意外と調和したり。少し違和感があるくらいでも面白いかなと思っています。

僕は器を作ってはいるんですが、使うことを想定しているというよりも、「面白いかどうか」という感覚を大事にしているところがあります。だから、用途が自由。ぐい呑みをぐい呑みとして使わなくてもいいし、茶托をお皿にしてもいい。使い方は、使う人に委ねたいと思っています。

- いろいろな用途で使えそうな作品が多いですよね。

そうですね。展覧会をやっていくうちに、お客さんが自由に使ったり組み合わせたりし始めた、というのもあります。

- 今回はドットの作品も印象的でした。

今回は久しぶりに、意識してドットを多めに作りました。もともとドットやボーダーが好きなんですが、展覧会の回数も増えてくると、毎回同じでは自分自身も新鮮じゃなくなるので、「今回はドットを多めにしようかな」という感じで制作しました。今年に限って言えば、これだけまとめて出したのはHULSさんが初めてですね。

次はボーダーを多めにしてみようかなとか、トゲトゲのシリーズをもっと展開してみようかなとか。展覧会ごとに少し特色を持たせることを意識しながら作品を作っています。

- 色釉を使った作品について教えてください。

色釉は、白ベースに金や銀を合わせた作品をずっと作ってきた中で、少し色の幅も作りたいなと思ったことがきっかけですね。最初は実験的な気持ちで始めたんですが、そこからの延長で、2色を掛け分けた作品を制作しました。上下から違う釉薬を掛けると、重なった部分では2色が溶け合いながら、また別の色になったり、少し流れて動きが出たりします。そこに自然な表情が出るのが面白いですね。窯の中で自然に溶けて、人がコントロールできないような表情が生まれる。作者自身も窯を開けるまで、作品が実際にどんな雰囲気になっているかはわからないんです。意外な流れ方や溶け方をしていたりとか。器の裏側に残っている目立ての跡も、表情として面白いかなと思っています。

- 自然な表情は、《dip》など他の作品にも通ずる特徴ですね。

そうですね。基本的に僕の作品は、何割かは自分ではコントロールできない部分を残しています。どこかに自然現象に任せて生まれる表情があって、その結果として作品になる。全部を自分の中だけで完成させたいという気持ちは、あまりないんです。やっぱりコントロールできない部分があるからこそ面白いし、そういう人の力を超えたところに魅力が生まれるんじゃないかなと思っています。例えば、花や野菜のフォルムのように、自然に生まれた形には、人には作れない美しさがありますよね。自分の作品にもそういうニュアンスが出たらいいなと思っています。だから無意識かもしれませんが、自然とそういう作り方を選んでいるんでしょうね。

- 今後挑戦してみたいことはありますか。

いろいろあります(笑)。アイデアはいつもたくさん生まれてくるんですよね。例えば《雲》のシリーズは、注器の蓋などではたくさん展開していますが、茶碗や茶托、器ももっとサイズ展開を増やしたり、ソーサーとして使えるものを作ってみたり、シリーズとしてもう少し幅を広げていきたいと思っています。

それから最近はマグカップを作ることが多くて、ハンドルのバリエーションも増えてきました。いつか「100種類のマグカップ」みたいな展示ができたら面白いなと思っています。

- 最後に、お客様へメッセージをお願いします。

展覧会を続けていて思うのは、「こんな組み合わせがあったんだ」とか、「そんな使い方もできるんだ」とか、自分が想定している以上の使い方を、逆にお客さんから僕が教えてもらうこともすごく多くて。だから僕は、用途にも幅とか余白みたいなものを持たせて、作品に決まった用途を乗せきっていないつもりです。例えば片口に花を生けるとかも、全然問題なくて。用途を定めずに、それぞれの暮らしの中で自由に使ってもらえたら嬉しいですね。

僕自身も「面白い」という感覚を大事にしながら作品を作っているのと一緒で、使う方にも「面白い」という感覚で、自分なりの組み合わせや使い方を見つけて楽しんでもらえたらと思っています。

安藤良輔さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/ryosukeando