作り手の声:小倉 縞縞(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて202278日から23日まで開催中の「これからの工芸 小倉 縞縞・高野竹工 展」。昨今、工芸の世界にも広がっているサステナブルなものづくりに焦点を当てた企画展です。本展に合わせ、北九州の小倉織ブランド「小倉 縞縞」にお話を伺いました。

- まず、「小倉 縞縞」の特徴やこだわりについて教えてください。

小倉織は約400年の歴史を持つ綿織物です。たて糸によこ糸の約3倍の本数を用い、木綿布でありがながらまるでシルクのような光沢を持っています。繊細なたて縞のグラデーションと丈夫で滑らかな質感は、江戸時代の武士の袴や帯として全国で流行しました。明治期には「霜降小倉」という新しい小倉織も生まれ、男子学生服として広がります。

 私たち「小倉 縞縞」は、現代の小倉織ブランドとして小倉織の伝統を継承しながら、ファッションやインテリア、建築やアートなど、1枚の布が持つ可能性をボーダーレスに追求しています。

- 再生ポリエステルを使用した《SDGsシリーズ》を発表されていますが、こうした取り組みを始めるきっかけは何だったのでしょうか。

小倉織は一度途絶えた歴史がありますので、これまでも未来につながるものづくりを目指してまいりましたが、コロナ禍で休業や工場停止を経験した際に、自社だけでなく社会全体で持続可能なものづくりに取り組むことをより強く意識するようになりました。

 地元の福岡県北九州市は、全国でも先駆けて「SDGs未来都市※1」に選ばれるなど環境に配慮したまちづくりを先進的に行っていることもあり、世界でも有数の環境技術を持った企業が集まっています。その中で衣料を回収して再生糸をつくる企業との出会いがあり、デザインとともに素材を通して「SDGs」に取り組むことになりました。

1 内閣府がSDGsの達成に向けて優れた取り組みを提案する自治体を選定し支援する制度のこと。

- 《SDGsシリーズ》に取り組む際、大変だったことはありますか。

これまではたて糸にもよこ糸にも綿糸を使用しており、再生ポリエステル糸を使うのは初めてでした。組成が変わることでどのような違いや問題が起こりうるのか未知の世界で、ドキドキしながらのスタートでした。生地の生産を担っている提携企業(小倉織物製造株式会社)では、再生ポリエステル糸の太さや質感などが綿糸と異なるため、織機の調整に苦労したようです。ベストな状態に持っていくまでには、織キズ※2 もかなり発生しました。仕上がった生地は、これまでの綿100%の生地とは質感が異なっていたので、どの製品に向いているのか、加工する上で問題がないかなど、加工所に確認してもらいながら進めていきました。実際には、心配していた気持ちとは裏腹に、特に問題が起こることなく商品化することができました。無事に店頭へ並べることができホッとしたのを覚えています。

2 織物を織る過程で発生する糸の引きつれや切れなどの傷のこと。

- これからもものづくりを続けていくために、何が必要だとお考えですか。

自社だけでなく社会全体の仕組みや地球環境に配慮し、単なる「消費」で終わらない、みんなで循環させていく仕組みづくりが必要です。例えば織物の材料となる糸や綿花についても、単に質を求めるだけでなく、それが地球環境や現地で働く人々の労働環境にとっても最適で持続可能な生産体制かどうか考える必要があります。そしてより良い環境づくりのためには、私たち生産側だけでなく、お客様も一緒に取り組むことが必須となってきます。私たちは「小倉 縞縞」らしい美しいデザインや丈夫さなどの機能性を生かして、楽しみながら取り組める仕組みを提案していきたいと考えています。

- お客様に向けたメッセージをお願いします。

一度途絶えた歴史を持つ小倉織。私たちはこの小倉織を地元北九州市だけでなく、日本独自の文化として皆様へお伝えし、実際に見て、触れて、体感していただく機会を何より大切に思っております。小倉織ならではの美しいグラデーション、使えば使うほど滑らかになる質感を一人でも多くの方に知っていただき、日々の生活をより豊かにできるように、また丈夫な生地を長く愛用いただけるように、さまざまなアイテムを開発しご提案してまいります。

小倉 縞縞コレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/kokurashimashima