作り手の声:陶芸家 安藤良輔さん(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて2023年4月7日から22日まで開催された、愛知県瀬戸市で作陶する作家 安藤良輔さんの作品展『生きてるカタチ』。安藤さんは、型による成形ののち、一つ一つに手作業で彫りや変形を施すことで連続性と個性を生み出し、独自の造形美を追求しています。今回の企画展に合わせて、作品の見どころやご自身の活動についてお話を伺いました。

- はじめに、陶芸家になったきっかけを教えてください。

17歳頃から陶芸教室に通っていて、それがきっかけで美術の大学を目指すようになり、愛知県の芸大に進学しました。大学では陶芸よりデザインに興味が湧いたのでその勉強をし、卒業後もメーカーでデザインに関わる仕事をしていました。でも、商品の企画もデザインもパソコン上で行うので、「自分で作れない」ということにストレスを感じ始めて。0から100まですべて自分で作り、仕上げまで手掛けることがしたかったんです。それで、29歳のときに一回デザインから離れて、もともとやっていた陶芸を勉強し直そうと決めました。陶芸の専門学校に2年間通って、愛知県にある陶磁美術館で陶芸体験施設の職員として3年間働いた後、独立しました。

- 今の安藤さんのスタイルはどのようにして生まれたのですか。

陶磁美術館で働きながら独立の準備をしていた頃、公募展に出品するために作風を探る中で今のスタイルができました。最初はろくろを使った制作もしていましたが、型中心になっていくにつれて作品の方向性も定まっていった気がします。型は同心円の回転体ではないので、ろくろではできない左右非対称な形ができます。作りたい形を自由に作れるところが楽しいです。陶芸家の中には型を敬遠する人もいて好き嫌いが分かれるけれど、僕はもともとデザインをやっていてプロダクトデザイン的な感覚があるので、型に対しての抵抗がない。むしろちょっと楽しい。だから僕に向いているのだと思います。

彫ったり変形させたりと手を加え始めたのは、大量生産のための技術である型を使いながらも、成形後にひと手間入れることで作家ものの良さを出したかったからです。彫りなどのパターンは多少あるけれど、そのときの気分で作ることが多いです。ボーダーやストライプのパターンが続いたら、今度は上から下まで均一のプレーンなものが作りたくなったり。少しずつ変化をつけて、一見同じようだけどよく見ると違う、ということも意識して作っています。

- 制作の中でこだわっているところはありますか。

ちょっとだけ自然の力に任せているところが僕の特徴だと思っています。例えば《雲の注器》のように膨らんだ形の型は、僕が膨らんだ形に石膏を削り出しているわけじゃなくて、水風船の中に石膏を流し入れたときの重力による膨らみを利用したものです。泥漿が垂れた形の《ディップ》シリーズは、実際に器を泥漿にディップして、それが自然に垂れた状態をそのまま作品にしています。木目の作品は、本物の木目から型を取ったもの。そういう意味で、どの作品も自然の力を借りているんです。自分の力ではできない自然の美しい部分を取り入れながら、そこに少しだけ自分の手作業を混ぜているという感覚です。

- 初披露の《Reclay》シリーズについて教えてください。

制作の過程で出る削りくずなどの土は、本当は再生できるのですが、作家レベルだと精製されたきれいな状態に戻すのが難しくて廃棄していました。そうした土を使った作品なので、型の特徴である安定していて完成された形とは対極にあるようなものを作ろうと考えました。もとは同じ粘土から、安定したきれいなものと、不安定で不均一なもの、両方できるというのが面白いかなと。ちょっとずつ出る端材を一つに固めた後、均一に練らずにシワやヒビをあえて残しています。形もきれいな円じゃなかったり。石ころみたいな感じにしたかったんです。川下とかに角が削られて丸くなった石がいっぱいあるところで、好きな模様や形の石を見つけると持って帰りたくなったりしますよね。そういう感覚で気に入った器を選んでほしくて、いろんな模様や形の器をたくさん作りました。

- これから挑戦したい作品はありますか。

《雲》のシリーズに集中して取り組みたいと思っています。雲のシリーズにはアートピースの要素が入っていて、表現の幅をより広げていけるような気がしています。空間をいろんな雲で覆い尽くしたいです。(笑)

- 最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

僕の作品は「何に使うんですか」と聞かれることが多いのですが、何かに使ってほしいなと思って作っているわけではなくて、作っているうちにお皿になったり片口になったりと、成り行きでできている部分があるんです。だから、自由に使ってほしいです。片口だけどお花を生けたりとか。楽しんで使ってもらえると嬉しいです。

安藤良輔さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/ryosukeando