作り手の声:陶芸家 中里健太さん(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて2023106日から21日まで開催中の中里健太 作品展『Growing』。中里さんは佐賀県唐津の「隆太窯」で、祖父・隆さん、父・太亀さんとともに作陶に励んでいます。今回の企画展に合わせて、作品の見どころやご自身の制作活動についてお話を伺いました。

- 作品展に向けて、テーマやご自身の中で意識されていたことがあれば教えてください。

HULS Gallery Tokyoでは初めての作品展ということもあって、日本の家庭や飲食店でも使いやすい器を中心に、作品にバリエーションを持たせてお客様にご提案できるような内容にしました。もちろん酒器や茶器などの一点物も。焼しめと粉引の花器は横長の形が似ているので、対のように展示したら面白いかなと思って選びました。

- 自信作や注目してほしい作品はありますか。

最近細めの花入をよく作っていて、だんだん形になってきたかなと思っています。もう少しまとめて作りたいと思っているところです。自信作というほどではないけれど、細めの湯呑も使いやすくていいかなと思います。先ほど挙げた横長の花器も注目してもらえると嬉しいです。

- 作品づくりでこだわっていることはありますか。

日本の器は手に持って使うことも多いので、どこか一点を器の顔とするのではなく、上から見たときと横から見たときの違いや、持ったときに感じる形や重さ、口当たりなどを大事にしています。僕の作品は目立つ装飾や釉薬の色がなくて、最初は目を引かないかもしれないけれど、色や模様がシンプルだからこそ、使っていくうちに「ああ、いいな」と思ってもらえるような器を作りたいと思っています。

- 唐津焼の特徴や魅力はどんなところでしょうか。

唐津はエリアが広く、朝鮮や中国など他産地からの影響も受けながら、それぞれが注文に応じていろいろなやきものを作ってきた歴史から、新しいものを受け入れてくれる懐の広さがあります。僕は唐津でやっている以上、唐津らしさも意識して作っていますが、昔の唐津焼にはない、ちょっと違うこともできる自由さは今の唐津焼のいいところかなと。簡素なものが多くて、じわじわと良さがわかるところも魅力だと思います。

- 焼しめ作品についても教えてください。

焼しめは祖父が種子島にあった土で作り始めたものですが、料理の油や色が染みないし、使ううちにザラザラしたところが取れて艶が出てきます。いろいろな模様ができますが、分厚い化粧土や釉が乗っているものとは見え方が違い、形が際立つ器だと思っています。

- 親子3代で作陶する中で、何か意識されていることはありますか。

3人の作品を同じ窯で焼成するので、お互いの展覧会や注文に合わせて制作しなければいけないというのはあります。例えば、父が展覧会に向けて大きな作品を焼くときは、それと同じ温度帯で焼けるものを作ろう、とか。でもみんなルーズな性格なので(笑)、あまり家族のことを重く考えてはいないですね。よく「(祖父や父を)超えなければいけないプレッシャーはありますか」と聞かれるのですが、あまりそういう意識はないです。いろいろなお客様がいらっしゃるので、「まだまだだね」と言う方もいるし、僕の作品の方が使いやすいと思う方もいるかもしれない。今はとにかく作り続けることですよね。隆太窯を存続させるためにも、良いものを作って手に取っていただくことが大事だと思っています。

- これからの目標はありますか。

今は一つ一つの展覧会や注文をきちんとやっていきたいです。より良いものができるように、器や料理についてももっとたくさん勉強しなければいけないと思っています。料理と器のイベントをいろいろとやらせていただいているのですが、料理は好きなので、そういうイベントは続けていきたいですね。唐津のやきもん祭りは食と器のお祭りで、飲食店とコラボして器を使ってもらうイベントがたくさんあります。手作りの器なので小規模なものが多いのですが、僕はせっかくなら人がやっていないことをやりたいなと思って、2年前に40席ほどのカフェでカレーのイベントを開催しました。それがとても良くて、今年も実施したのですが、親子連れも観光客も唐津の人も、みんなに楽しんでもらえたと思います。やきものの良さや日本の良さを知ってもらえるイベントをこれからもやっていきたいです。

- 器を使うときのアドバイスはありますか。

基本的にどの器も、使ったらそのままにせず洗うようにしていただければ大丈夫です。盛り付けるときは、余白を残してもらえたら。気持ちにも余裕が生まれて良いと思います(笑)。

- 最後に、お客様へメッセージをお願いします。

普段の暮らしの中で、楽しいときやちょっと疲れたときなど、いろいろなタイミングでそばにある器であればいいなという思いで作っています。仰々しいものではないので、たくさん使ってもらえたら嬉しいです。

中里健太さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/kentanakazato