作り手の声:ガラス作家 光井威善さん

HULS Gallery Tokyo にて 2022   日から 23 日まで開催された、富山県在住のガラス作家 光井威善さんの作品展「Melting」。今回の企画展に合わせて、作品の見どころやご自身の制作活動についてお話を伺いました。

- はじめに、光井さんがガラス作家になろうと思ったきっかけについて教えてください。

小さい頃から図工と体育の授業が好きでした。高校は普通科で、大学進学のために塾にも通っていましたが、勉強は好きになれなくて。「好きなことがしたい」と思って芸大に行くことにしました。その時点では、具体的に何がしたいかまでは決まっていませんでしたが、陶芸、織物、ガラス、デザインの4科目を一年やってみて、最初は陶芸にしようと思いました。轆轤(ろくろ)が好きで、結構上手にできていたし。

でも考えているうちに、陶芸は人気があって、日本でも工房や窯元がたくさんあるから、あとからシフトチェンジすることもできるかなと。当時だからこそできることをやろうと思い、陶芸の次に好きだったガラスを選びました。

ガラス制作の作業も得意でした。溶けたガラスを竿ですくい取って回すとき、手だけでなく身体全体を使います。小さい頃から図工と体育が好きだった自分には、すごくフィーリングが合いました。それに、僕はもともと手先が器用なのですが、ガラスは難しくて、それまでで一番技術を習得するのが大変でした。もちろん悔しさもあったけれど、その大変さが新鮮で面白かったんです。初めてものづくりの本当の楽しさを知ったのかもしれません。

- 本展では、光井さんの人気シリーズ《Silence》や《Amber on Gray》の作品を展示しました。まず、《Silence》がどのようにして生まれたのか、教えていただけますか。

Silence》は、富山のガラス工房でスタッフとして働いていたときに作ったものです。工房では注文品を作る仕事をしていたのですが、作業に慣れすぎて楽しめなくなってきてしまって。そんなときに、工房のイベントで一人ずつ一点ものを作ることになったんです。学生の頃はオブジェばかり作っていましたが、工房に入ってからは器もよく作るようになっていたので、器で考えてみることにしました。そこで、自分が好きな器って何だろうと考えたときに、ただ大量生産するものではなくて、一つ一つに違った景色があるオブジェのようなグラスにしたいなと。そうして生まれたのが《Silence》です。久々に好きなものを作ったなという感じがしました。作る楽しさを思い出したというか。「好きで作っている」と自信を持って言えるものができたと思いました。そこから少しずつ改良して今に至ります。

-《Silence》はどんなところにこだわって作っていらっしゃいますか。

僕は色弱で、はっきりとは色の判別がつきません。だから、僕が良いと思う色の組み合わせが、周りからするとそうではないことがよくありました。例えばクリスマスカラーの赤と緑は、補色同士だから全く違う色だと言われますが、僕にとっては近い色で一体感があります。そういう感覚の違いは面白いなと思います。色に関しては、小さい頃からびっくりすることがたくさんありました。だからこそ僕は色に興味があるし、色を感じたいという気持ちがあります。

Silence》は、自分が思いついた色をいろいろなパターンで組み合わせています。カラフルだけれど、モノクロームのように静かな落ち着いた雰囲気を出したくて、表面を線状に一本一本削っています。そうすると色が柔らいで統一感が出ます。静けさがメインなので、作品のタイトルは《Silence》にしました。

-《Amber on Gray》はどのような経緯で作り始めたのでしょうか。

Silence》から派生して思いついた作品です。《Silence》は小技を積み重ねて作る、ぎゅっと濃密な世界です。ディテールにこだわっているので、小さい方がデザインが引き立ちます。一度《Silence》の大きいものを作ってみたのですが、大きい作品の細かい部分にこだわって作っても、労力の割に感動が薄くて、あまりよくありませんでした。でも小さいものばかりだと、展示会ではこぢんまりと見えてしまって嫌だなと。そこで、《Silence》とは違った見せ方の作品が何かできないかなと考えて作ったのが《Amber on Gray》です。《Amber on Gray》は色の重ね方によって滲みが出て、《Silence》とは違う表情が出ました。そして大きければ大きいほど、その表情がよく見えるんです。

- なぜアンバーとグレーの色の組み合わせを選んだのでしょうか。

モノクロの雰囲気が好きなので、グレーはもともと好きな色でした。アンバーは、制作中に見ている溶けたガラスに近い色なんです。どんな色のガラスも、1000度くらいの溶けた状態だと、オレンジがかった不思議な色に光ります。その色が、ガラスの一番きれいな色だと思うんです。グレーとアンバーが合うかどうかわからなかったけれど、試してみたらしっくりきました。ほかの色で作ることもありますが、グレーとアンバーは一番ニュートラル。色という感じがしないというか。感覚的に落ち着く色ですね。

- 本展での新作はありますか。

Amber on Gray》の片口と、《Silence》の丸型のグラスです。片口は今回出品した1点が最初に作ったものですが、そのあとなかなか上手くいかなくて。難しかったです。《Silence》は今までと色の入れ方を変えて、より色の境目が柔らかく見えるように作っています。

- 最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

ただのガラスの器としてではなく、こだわっている細部まで見てもらえたら嬉しいです。例えば、ガラスの厚みは特に気をつけて作っています。ガラスは透けているので、厚みによって雰囲気が大きく変わります。そういう細部に、僕が今までやってきたことの精神性みたいなものが表れているんじゃないかなと思っています。

でも自分の作品が良いのか悪いのか、正直いつも不安です(笑)。客観的に見られないので、皆さんのリアルな反応がとても気になります。それを踏まえて、自分の感覚とブレンドしながら作っていく必要があると思っています。

光井威善さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/takeyoshimitsui