《⽇本酒コラム》第4話:東京都

文:茂村千春

東京の日本酒の特徴

日本酒といえば自然豊かな土地で造られるイメージをもちますが、東京でも様々な日本酒が作られています。味わいとしては、濃醇なタイプが多かった以前に比べると、すっきりとしたものや、しっかりとした骨格のある味わいのものが増えてきているようです。

日本全国の日本酒がネットで購入できる現代において、その土地の地酒を飲むということは食文化や風土を感じることができる一つの楽しみでもあります。東京ではどのような日本酒が造られているのか、詳しく見ていきたいと思います。

東京の代表的な日本酒

東京都の酒蔵をいくつか紹介します。まずは、都心にある唯一の蔵である東京港醸造さん。こちらは、港区芝のビルの中で日本酒を醸している珍しい酒蔵さんで、「江戸開城」という銘柄を醸しています。仕込水はなんと東京の水道水です。こちらの蔵の歴史は意外にも古く、前身となる「若松屋」という酒蔵さんに始まり、江戸時代(1812 年)から約 100 年間続いたのちに一度廃業し、復活したという流れがあります。東京の中でも自然豊かな東村山にある豊島屋酒造さんは、明治神宮に御神酒を納めていることで有名です。創業はなんと慶長年間(1596年)という長い歴史があり、東京の地酒として親しまれている銘柄を醸している酒蔵です。

酒器に合わせた日本酒

今回の酒器は、haku 硝子さんの江戸切子のぐい呑「火華」と「八角」です。どちらも繊細なカッティングと大胆な模様が美しく、琥珀色と薄い緑色が印象的なぐい呑です。綺麗な琥珀色を眺めているうちに、熟成酒が飲みたくなりました。東京の酒蔵で古酒と考えた時に頭に浮かんだのが、澤乃井で有名な小澤酒造さんの「蔵守」です。ひんやりとした蔵に並べられて熟成される「蔵守」は綺麗な琥珀色をしており、瓶が透明なので、その色を初めて見た時はとても驚いた記憶があります。今回は、2013年醸造のものを選びました。

温度は常温で頂きます。香りは、チョコレートやカカオニブのようなほろ苦い香りと、ローストナッツのような香り。烏龍茶のような熟成茶葉のような香りもします。味わいは、まずは香りの通りのビターチョコレートのようなほろ苦さと、おこげのようなお米の旨味。後味はドライフルーツのような甘みが少しあります。このお酒に合わせるなら、キャラメリゼしたナッツや、チーズ。チョコレートも合います。チョコレートでは、オランジェットなども合いそうです。酒蔵の方はバニラアイスとも合うとおっしゃっていました。日本酒というよりもウイスキーのような感覚で食べ物と合わせると良いかもしれません。

今回は、美しい酒器の琥珀色に誘われて、琥珀色の古酒を選んでみました。洋服の色に合わせて口紅を選ぶように、酒器の色や質感に合わせてお酒を選ぶのも楽しいものです。

《茂村千春 プロフィール》

大阪府茨木市出身。日本酒好きが高じて2014年に唎酒師の資格を取得。2017年より東京の「エコール辻」で日本料理を学ぶ。2019年5月から料理家である姉・茂村美由樹と始めた「広尾おくむら」での「週1おばんざい」は、好評を得ながら継続中。「日本料理や日本酒の魅力を伝える」ことを目標に、料理教室やイベントなど、精力的に活動を続けている。

■ギャラリーからのおすすめ酒器(東京都)

・haku硝子 火華ぐい呑み緑(25,300円)

上部を一周する江戸切子の伝統紋様「菊繋紋様」の繊細な輝きと、下部に力強くカットされた炎の躍動感が融合したぐい呑。底から立ちのぼる炎が、琥珀色から緑色へのグラデーションの中で美しく燃えています。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/hakuglass/products/hakuglass-1

・小川郁子 天開酒盃 金紫(31,900円)

全体を縦横に走る大胆なカットが印象的な酒盃。上部のぼかしの文様がアクセントとなり、緩急の利いた見事な意匠となっています。柔らかくも凛とした美しさを湛える、切子の多様な技術を駆使する作家のセンスあふれる一品。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/202105-sakeware/products/ikukoogawa-1

・木本硝子 KUROCOリング ぐい呑(18,700円)

漆黒の黒硝子を用いた江戸切子のぐい呑。直線をモチーフにした意匠が、落ち着いたモダンな佇まいを作り出しています。透けない黒硝子も正確にカットする職人の技術に脱帽です。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/kimotoglass/products/kimotoglass-2

・木本硝子 es Stem 01 w/Edo Kiriko(8,800円)

お酒の個性を引き出し、香りを一層引き立てるグラスシリーズ。口元の繊細なつくりや滑らかなボディラインは、機能的でありながら視覚的な美しさも備えています。あらゆる食事のシーンで、至福のひとときを演出してくれるグラスです。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/kimotoglass/products/kimotoglass-6

 ・森銀器 善興 純銀ぐいのみ 槌目 磨き仕上げ(41,800円)

江戸時代から受け継がれる金属加工技術を用いた純銀製のぐい呑。熟練の職人が一枚の銀板を叩きながら少しずつ立体へと成形し、丹念に磨き上げて完成します。純銀の眩い輝きに包まれて、日本酒の味わいを贅沢に楽しむことができる一品。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/moriginki/products/moriginki