《⽇本酒コラム》第8話:福井県(JP only)

 

文:茂村千春

福井県の日本酒の特徴

豊かな水源に恵まれた福井県は、米どころとして知られています。日本酒造りに適したお米である酒造好適米五百万石の生産量は、全国で上位を占めています。美味しいお水とお米が揃えば、やはり美味しい日本酒が生まれます。日本でも有数の酒どころである福井県の日本酒は、すっきりとした淡麗の味わいが中心ですが、濃醇な旨味や香りを持つ日本酒も人気のようです。

実際にどのようなものがあるのか見ていきたいと思います。

福井県の代表的な日本酒

福井県の日本酒と言えば、黒龍酒造の「黒龍」が全国的にも有名です。すっきりとした味わいのものが多く、様々なシーンで寄り添ってくれます。同じく全国的に有名な日本酒に、加藤吉平商店の「梵」があります。こちらは華やかな香りと味わいで、女性にも人気です。

どちらも日本だけでなく海外でも人気が高い日本酒です。

酒器に合わせた日本酒

今回ご紹介する酒器は、鯖江の漆器メーカーである土直漆器さんの「欅 お月見片口」と「欅 お月見杯」です。美しい欅の木目がうっすらと見える艶やかな漆の肌。片口と杯の底には三日月や満月の姿が。日本酒を注ぐと、水面に映るお月様のようです。

今回合わせた日本酒は、黒龍酒造の「黒龍 秋あがり」です。お月見と言えば秋です。こちらの酒器を見てすぐに、ひやおろし*1などの秋に美味しいお酒を合わせたいと思いました。また、酒器のすっきりとした佇まいや透明感から、日本酒の味わいも濃醇なものより淡麗なものが似合うように感じました。

ではさっそく味わってみます。香りはドライなソーダのような香りや、ほのかに乳酸のような、ヨーグルトに近い柔らかな香りもします。口に含むと、爽やかなキレのあるシャープな味わい。後から少し苦味や旨味が追いかけてきます。キレがよいため、あと口はさっぱりとしています。お料理を合わせるなら、お刺身や天ぷら、秋の味覚のさんまの塩焼き。松茸の土瓶蒸しなどにも合いそうです。

今回は、その季節ならではの日本酒と酒器を合わせてみました。季節を愉しみ、自然を愛でながら一献傾けるというのは、とても贅沢で幸せなひとときです。酒器の底で揺らめくお月様の、穏やかで凛とした表情。なんとも言えない郷愁を誘う、その神秘的な美しさに酔いしれて、素敵なおうち時間を過ごしてみてください。

注釈)

1/ 一般的な日本酒は、冬に醸造されて搾られた後に一度火入れ(加熱殺菌)し、その後出荷される前にもう一度火入れを行う。これに対し、春先に一度火入れした後ひと夏貯蔵庫で寝かせ、秋に火入れをせずに出荷される日本酒を「ひやおろし」と呼ぶ。ひと夏熟成させた日本酒はまろやかな味わいが特徴。なお一度も火入れをせずに出荷されるものは「生酒」と呼ばれる。

《茂村千春 プロフィール》

大阪府茨木市出身。日本酒好きが高じて2014年に唎酒師の資格を取得。2017年より東京の「エコール辻」で日本料理を学ぶ。2019年5月からは料理家である姉・茂村美由樹とともに「広尾おくむら」にて「週1おばんざい」を開催、好評を博す。現在は専用のアトリエにて開催される料理教室に情熱を注いでいる。

■ギャラリーからのおすすめ酒器(福井県)

・土直漆器 酒器 欅 お月見片口 中(13,200円)

美しい木目を生かし、白檀塗で仕上げられた1合サイズの片口。ふっくらとした形が漆の艶やかな質感を引き立てています。見込みには月がきらめく、気品を湛えた一品。同シリーズの杯と一緒にお使いいただくとより一層華やかです。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/tsuchinaoshikki/products/tsuchinaoshikki-10

・土直漆器 酒器 欅 お月見杯 ペア(11,000円)

中央に三日月と満月が施された杯のセット。お酒を注ぐと月が揺らめいて、風流な雰囲気が漂います。使うほどに味わいが生まれ、漆の変化を楽しめるところも魅力。記念日やお祝いの席におすすめです。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/tsuchinaoshikki/products/tsuchinaoshikki-11

・畠中昭一 栗の木ぐい呑 古代朱(9,680円)

しっとりとして深みのある古代朱が美しいぐい呑。柔らかな面取によって、持ちやすく上品なシルエットに仕上げられています。現代の名工にも選出されている畠中氏のこだわりが凝縮された一品。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/shoichihatakenaka/products/shoichihatakenaka