《⽇本酒コラム》第9話:佐賀県(JP only)

この日本酒コラムでは、料理家であり、唎酒師としても活躍する茂村千春さんにご協力いただき、日本各地の酒器と日本酒の魅力をお伝えしてきました。そんなコラムも、今回が最終話となります。磁器の伝統的な産地である佐賀県のお酒と酒器のお話をお楽しみください。

文:茂村千春

佐賀県の日本酒について

佐賀県を取り上げるのは、今回で2回目です。佐賀県の日本酒の特徴として、濃醇な甘口のものが多いということや、「佐賀県原産地呼称管理制度」という佐賀県独自の制度があるということには、前回の第1回目のコラムでも触れました。平成16年から始まったこの制度では、100%佐賀県産の原材料を使用している、味や品質が優れた製品のみが「The SAGA認定酒」として認定されます。もし何を選んだら良いかわからない時は、こちらの認定マークがあるものを選ぶのも一つだと思います。それでは佐賀県の代表的な日本酒をご紹介します。

佐賀県の代表的な日本酒

焼酎のイメージが強い九州ですが、有名な日本酒もたくさんあります。第1回目のコラムでご紹介した「鍋島」や、「七田」「東一」はもちろん、天吹酒造の「天吹」は、さまざまな花酵母を使って酒造りをしている蔵として有名です。花酵母由来の華やかな香りや、フルーツのような香り、優しい飲み口は、特に女性に人気があります。

酒器に合わせた日本酒

今回の酒器は、有田焼の窯元、李荘窯の「花型1合片口」と「花型盃」です。片口には持ち手がついていて、どちらも上から見るとお花の形になっています。上品な銀色で、触れるとひんやりと心地が良い。冷酒でいただくお酒が向いていそうです。合わせた日本酒は、光栄菊酒造株式会社の「光栄菊 スノウ・クレッセント」。光栄菊の中でも今回選んだスノウ・クレッセントは、瓶の底にうっすらと濁りがあり、瓶をゆっくり傾けると、その濁りが雪のように舞い広がります。微発泡で、口に含むとフレッシュ感も感じます。香りは、りんごや洋梨のようなフルーティーな香りと、乳酸の香りがほのかに感じられます。

味わいは、爽やかな酸味とキレの良い後味で、とてもバランスの良い味わいです。お料理に合わせるなら、白身魚のカルパッチョ。りんごのスライスもトッピングして。レモンで爽やかにするとさらに合いそうです。バランスが良いので、食中酒としてさまざまなお料理と相性が良さそうです。天ぷらなどにも合わせてみたいですね。

今回の酒器は、真上から見た時の可憐なお花の形、落ち着いた銀色、可愛らしい持ち手が魅力だと感じました。そこで、お花の形がより映えるように、うすにごりのお酒を選んでみました。乳酸のようなミルキーな香りとまろやかさがあるので、手つきの片口で注ぐ雰囲気にぴったりです。お皿の形に合わせてお料理を作るように、酒器の個性を生かす日本酒を選んでみてはいかがでしょうか。とっても楽しいですよ。

《茂村千春 プロフィール》

大阪府茨木市出身。日本酒好きが高じて2014年に唎酒師の資格を取得。2017年より東京の「エコール辻」で日本料理を学ぶ。2019年5月からは料理家である姉・茂村美由樹とともに「広尾おくむら」にて「週1おばんざい」を開催、好評を博す。現在は専用のアトリエにて開催される料理教室に情熱を注いでいる。

■ギャラリーからのおすすめ酒器(佐賀県)

・李荘窯 / TR釉天目釉外銀彩 花型1合片口(7,700円)、内外銀彩 花型盃(4,950円)

有田焼の窯元・李荘窯の片口と盃。銀彩のメタリックな光沢が華やかです。花が咲いたような形の可憐な盃は、すっと立ち上がった形でお酒の旨みを味わえる「純米」と、口が大きく香りの広がる「大吟醸」の2種類。お酒や気分に合わせて使い分けてみるのもおすすめです。経年変化する銀彩の風合いを楽しみながら、永くお使いいただきたい酒器。

TR釉天目釉外銀彩 花型1合片口
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/risoporcelain/products/risoporcelain-54

内外銀彩 花型盃(純米)
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/risoporcelain/products/risoporcelain-55

内外銀彩 花型盃(大吟醸)
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/risoporcelain/products/risoporcelain-56

・寺内信二 / 泉山陶土 染付 手作りぐい呑(13,200円)

李荘窯の四代目当主、寺内信二さんのぐい呑。今ではほとんど使われなくなった有田の泉山陶石のみを原料に用いて、ろくろで成型したこだわりの作品。見込みいっぱいに広がる花が瑞々しく、爽やかな空気を湛えています。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/shinjiterauchi/products/shinjiterauchi-40

・寺内信二 / 染付 酒盃(8,800円)

ほんのりと青みがかった白が美しい、有田焼のぐい呑。寺内さんがインスピレーションを受けているという古伊万里のように、ろくろの線や釉掛け時の指の跡から手仕事の温かみが感じられます。飲み口は薄くシャープで、口当たりの良さが魅力。中央には縁起物の鯛が生き生きと跳ねる、可愛らしい一品。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/newitem/products/shinjiterauchi-48

・徳永榮二郎 / 花霞 ぐい呑(7,700円)

徳永榮二郎さんを代表する釉薬の一つ「花霞」。桜を思わせる柔らかな色合いは、どこか懐かしく趣があります。持つ部分がくぼんでいるので手によく馴染みます。ぐるりと表情豊かな景色を楽しめる一品。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/eijirotokunaga/products/eijirotokunaga-2

・徳永榮二郎 /   荒波 徳利(18,700円)、荒波 ぐい呑(7,700円)

打ち寄せる波がしぶきを上げているかのような、迫力あふれる徳利とぐい呑。炭化焼成によって様々な色が混じり合い、絵画のような独創的な作品に仕上がっています。

荒波 徳利
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/eijirotokunaga/products/eijirotokunaga-9

荒波 ぐい呑
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/eijirotokunaga/products/eijirotokunaga-10

・副久製陶所 / 副久GOSU hana 徳利、盃セット(5,940円)

青の濃淡が美しい「副久GOSU」シリーズの酒器セット。花のように広がる淡く滲んだ染付は、徳利と二つの盃それぞれに濃さが異なるオリジナルの呉須を使い分けています。色の微妙なニュアンスを繊細に表現した、青の奥深さを堪能できる一品です。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/soekyu/products/soekyu-6

・文山製陶所 / 冷酒セット(16,500円)

亜麻の布を押し当てることで、布を纏ったような風合いに仕上げたユニークな片口&猪口セット。触れればひんやりとする磁器ながら、ざらりとした手触りが不思議な心地よさを生み出しています。縁にはゴールドがきらめき、高級感が漂います。

https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/newitem/products/bunzan-3