作り手の声:陶芸家 澤克典さん・福島一紘さん(JP ONLY)
HULS Gallery Tokyoにて2025年9月5日から20日まで開催中の、澤克典・福島一紘 二人展『技を編む―陶表現の現在地』。信楽と伊賀という隣接する地で作陶に励みながら、それぞれに新たな試みや多彩な表現を展開するお二人に、今回の企画展に合わせてお話を伺いました。
- お二人は以前から長い付き合いですか。
福島さん:もう十数年。20代の頃からでした。
澤さん:伊賀と信楽で近いし、お互い同級生なんで。仕事でもプライベートでも、けっこう会いますね。
- HULS Gallery Tokyoでは、澤さんは2回目、福島さんは初めての展示となりますが、今回の展示に向けて意識されたことはありますか。
澤さん:呼継の作品を前回よりも増やしたいなと思っていました。前回の展示はちょうど呼継を始めた頃で、たぶん酒器しかなかったんじゃないかな。それで一点ものもやりたいと思って、陶筥や茶碗も作りました。
福島さん:(呼継の)陶筥って初めて見た。
澤さん:そう、陶筥は初めて。呼継は時間がかかるので、やりたいと思ってもなかなか数ができないんです。
福島さん:僕は初めての展示なので、自分らしく行くしかないかなと。ありのままの自分を出せたらと思っていました。
- お互いの作品の魅力について教えてください。
澤さん:造形に迫力があっていいなと思います。二人とも織部をやっていますけど、捉え方が違っていて勉強になることも多いです。造形の違いで見え方が変わったり。信楽と伊賀でそれぞれ焼締もやっていますが、その中でもこれだけ幅があって違うから、そういうところはいつも刺激になります。
- 刺激や影響を受けることがあるのですね。
澤さん:もう堂々と「これいいですね、パクります」ぐらいの(笑)。全部はパクらないですけど、インスピレーションをもらったりとか。周りの作家もみんなそんな感じです。今回は鈴木(大弓)さんや山口(真人)さんの作品の陶片を使った呼継のぐい呑にも挑戦しました。今後福島くんの作品の陶片も使ってみたいです。
- 福島さんから見て、澤さんの作品の魅力はどのようなところにあると思いますか。
福島さん:体力があるというのもありますが、めちゃくちゃ仕事してるんですよ。僕が知ってる伊賀と信楽の作家の中で、一番多く穴窯を焚いている人なんじゃないかなと思います。そのバイタリティがすごいなと。それだけ数をこなして経験を積んでいるから、作品にも安定感がある。僕に足りない部分を持っているので、そういうところはすごく魅力に感じますね。
- 澤さんは年に何回くらい窯を焚くのですか。
澤さん:10回……11回まで焚いたことがあります、穴窯。それはサポートしてくれる人がいるからできるんですけどね。みんな周りの同年代に刺激を受けながらやっているのかもしれません。僕からしたらみんな頑張っているように見えるから、「負けたらあかんな」みたいな刺激もあるし。そういう意味でも、いい環境なのかもしれないですね。
- 注目してほしい作品や新作について教えてください。
澤さん:陶筥など呼継の一点ものや、呼継のぐい呑です。さっき話したように他の作家の要素を入れたから注目してほしいというわけではないですが、今までと全然違うタッチで作っているので、どう見えるか。世間からしたら「澤さんの作品じゃないやん」って言われるかもしれませんけど(笑)。
呼継はコロナで時間があったのがきっかけで、最初は酒器から始めました。やっていくうちに「こんなんやってみよう」「あんなんやってみよう」とどんどん広がっていくんです。「信楽と織部の壺でもできひんかな」とか。構想はあるけど、なかなか簡単にはいかない。呼継はパーツごとにバラバラに焼いているんですが、焼くときに少しずつ変形するので、合わせるのが難しいんですよね。楽しさもあるけど、上手くいかないときはどうしようかと考えます。普段作っている三段重や五段重でもできないかと思うんですけど、もう少し時間のあるときにやろうと思います。
福島さん:五段重も、作るだけでもけっこう大変やしね。
澤さん:そうそう、大変やし、それを切って、焼いて、戻さなあかんから。で、2個作らなあかんのよね。織部と信楽と。って考えてると「あ、今じゃないな」って(笑)。
福島さん:タイミングってあるからね(笑)。僕は今年から梅花皮手という織部の作品を始めました。志野の原料を探しに岐阜県の美濃地方へ行ったとき、梅花皮の縮れが出る天然の長石を探していました。過去にはそういうものがたくさんあったのでいろいろなところで聞いてみたんですが、年々採れる原料が減っています。それで、また別の原料を探しているときに、この梅花皮を出す石に出会いました。最初は志野の原料を探していましたし、この石は志野の原料にもなるんですけど、「織部で使って何か表現できないかな」と思いました。それで制作したのが織部梅花皮手です。まだ出発点なので、ここから微調整を繰り返して、より良いものを作っていきたいです。
作品には生命感のようなものを出したいと思っています。動きとか。実際、やきものは生きているわけではないですが、「動き出しそうやな」「生きてるんじゃないかな」と感じられるといいなと。ちょっと大げさですけどね。
- 最後に、お客様へのメッセージをお願いします。
澤さん:ご自由に使っていただけたら嬉しいです。
福島さん:楽しんでいただけたらいいなと思います。
澤克典さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/katsunorisawa
福島一紘さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/kazuhirofukushima