作り手の声:陶芸家 木村展之さん vol.2(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて2026年8月14日から29日まで開催された木村展之 作品展『青瓷・天目-拡がる情景』。京都の陶芸一家に生まれ育った木村さんは、青瓷や天目を中心に、端麗な造形と多彩な釉薬表現を兼ね備えた器を制作されています。今回の企画展に合わせて、作品の見どころやご自身の制作活動についてお話を伺いました。

*前回の企画展でのインタビューはこちら

- HULS Gallery Tokyoでは3年ぶり2回目の展示となります。本展に向けて意識されたことはありますか。

2回目ですので、前回とは違うものも出品しようと新しい釉薬に取り組みました。あとは、より質を上げて納得できる色や形を目指しました。

- 新しい釉薬について教えてください。

制作の合間は常に原料の組み合わせや好きな色を試しているのですが、最近は天目のバリエーションを増やしたくて、二重掛けのテストをよくしています。釉薬を重ねると色合いが大きく変化しますから、その過程で濃いブルーの《青濤釉》や、飴釉に藁灰釉を掛けた《朝鮮唐津》などを作りました。

《青濤釉ぐい呑》
《朝鮮唐津ぐい呑》

 

《鉄燿窯変深碗》などに使っているシルバーのキラキラした釉薬も新しいです。天目では、ベーシックな調合の《油滴》をよく作っていましたが、もっと個性を出したくて。ブルーのキラキラした《瑠璃光》は、個性的だけれど歩留まりが悪い。食器に使えるくらいリーズナブルで成功率が高く、かつ個性のある釉薬をずっとテストしていて、やっと気に入るものができました。

《鉄燿窯変深碗》

 

-《漆黒》も新作とお聞きしましたが、どのように生まれたのでしょうか。

天目はテカっとしているので、よりお料理が映えるマットなものも作りたいなと思っていました。黒楽や引出黒なども昔から好きなんですよ。天目のテストをする中で、艶のない黒の釉薬が出てきて「これは使える」と。

- 青瓷について、最近取り組んでいることはありますか。

汝窯青瓷など昔の名品の質感に近づけたくて、その取り組みは常に続けています。テストピースで一つ綺麗な色が出たのですが、大きいサイズになると上手くいかなくて。青瓷で言うと、貫入の大きさやどのような種類の貫入を入れるかといった狙いがあるので、釉薬の厚み、土の調合、窯の焼き方など、たくさんある要素を調整していくのですが、同じ原料であってもロットごとに微妙に分析値が変わるんです。そうするとまたゼロから調整しなければなりません。原料0.1g単位で色の出方は違ってきます。ものすごくデリケートなので、普段の仕事の半分は理想の色に戻すための微調整、もう半分が新しい釉薬の開発という感じです。

- DMに使用させていただいた《鉄燿窯変鉢》についてもお聞かせください。

日本伝統工芸展や日本伝統工芸近畿展といった公募展用に、普通の丸ではなく個性的な形に挑戦してみました。窯の大きさに制限があるので5つの組物にして、デザインは直線的な方が天目に合うし自分の好みでもあったので、シャープに仕上げました。それぞれ翡翠、風車、ステルス戦闘機、車のホイールをモチーフにしています。左右非対称になっていて、動きを出せるように工夫しています。

- とてもユニークな形ですが、試行錯誤されたのでしょうか。

方眼紙を広げて、どのバランスが一番格好良いか、ミリ単位でずらしながら描きました。ろくろを挽いたときは真円で大きいですが、型紙に合わせてカットすると小さくなりますし、高温で焼くので垂れて形が崩れないようにぎりぎりの角度を見極めて、バランスを考えながら制作しました。

- これから挑戦してみたいことはありますか。

オリジナルの個性的なものを作りたいです。どちらかと言うと形よりも色の方に重きを置いています。色をコントロールしたくて、焼成時に窯のどこに置いたか、釉薬の厚みは何ミリか、何秒掛けたかといった具合にデータを残して再現できるようにしているのですが、なかなか思い通りにいかなくて。狙った色を出せるようになりたいですね。

- 最後に、木村さんの作品を使われるお客様へメッセージをお願いいたします。 

自分が良いと思えるものを作っているので、喜んで使っていただけると「良いところへお嫁に行ったな」と嬉しくなります。楽しんで愛用してもらいたいです。

《鉄燿瑠璃光茶碗》

 

木村展之さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/nobuyukikimura