作り手の声:陶芸家 岩佐昌昭さん(JP ONLY)

HULS Gallery Tokyoにて2026116日から31日まで開催中の岩佐昌昭 個展『寂静の景』。岩佐さんは、島根県出雲市にて寺院の住職を務めながら、唯一無二の表情と静かな佇まいが魅力の「陶胎漆器」を制作されています。HULS Gallery Tokyoでは初めてとなる今回の企画展に合わせて、お話を伺いました。

本展に向けて意識されたことはありますか。

外国人のお客様が多いということ念頭に作りましたね。これまでの経験をもとに、《銀彩墨流し》の作品など、海外の方が好みそうなものを多めに選びました。

陶胎漆器の技法について教えていただけますか。

陶胎漆器もろいろあるんですが、僕の普段作っている《銀彩》の作品は、銀を貼る際に漆を使用しているので、陶胎漆器と呼んでいます。ただ、その後に数百度で焼いているので、漆成分はほぼ飛んでしまうんですよね。銀が残った部分が景色になる、というようなやり方です。漆は使用してはいるんですが最終的には飛んでしまうので、その作品を陶胎漆器と呼んでいいかどうかは、なんとも言えないところなんですけど。《銀彩墨流し》に関しては、その後さらに黒い漆で表情をつけているので、それは陶胎漆器だと思います。

岩佐さんの考える陶胎漆器の魅力を教えてください。

人と差別化もできて、面白いかなと思ってやっています。やきものの修業時代に漆の先生と出会って、そこで最初に金継ぎを教えてもらいました。金継ぎはまさに陶胎漆器なんですよ。漆を使って直すので。それを発展させていきました。

仏像や仏具というのは、銀箔や金箔が多用されています。それが何百年と経って、良い表情になっているんです。修業を終えた後、僕は坊さんになったので、そういうものを見ていく中で自分の作品に落とし込めたらなと思いました。それで今の、箔を使う技法で制作するようになりました。

- 制作全般におけるこだわりはありますか。

品と緊張感。これまで一貫して、それが僕のテーマです。少し表情や表現は変わってきているんですけど、そこをベースにやっているつもりです。口造りや全体的なフォルムのシャープさは意識しています。そこを意識することで、表現の仕方が変わっても、自分ならではの雰囲気がずっと出せるんじゃないかなと思って。

- インスピレーションの源泉があれば教えてください。

自分は、そういうものが好きなんでしょうね。無意識のところで出てくる表現が、おそらく本当に自分がしたい表現なんだと思います。

- 手びねりの作品には、別の技法が使われていますか。

あれは灰釉を使っています。灰釉も2種類あって、ビードロ系の灰釉の作品と、藁灰の作品を出品しています。

- 今回の展示作品のうち、新作や自信作はありますか。

真鍮を使った《金銅彩》の作品ですね。以前、金と銀はやっていたんですけど、金はとにかく値段が高くなっていて、少し失敗するとリスクも大きい。それに、金は変化しません。それはそれでもちろん良いんですけど、僕は変化を楽しみたい。その点、真鍮はやっぱり変化があるので面白いなと思って。いつも銀箔を使うところで、今回試しに真鍮を使ってやってみました。焼く温度によっても色味が変わり、無限に表情があるので、その辺も面白いですよね。いろいろと実験しながらやっています。

-《樹皮》の作品についても教えてください。なにかきっかけがあって制作されたのですか。

12年前くらいから制作している作品ですが、けっこうデリケートなので、こういう展覧会ではあまり出していないんです。土と漆の特性を利用して、自然の力で造形しています。たぶん本当の樹皮も木から皮だけが落ちて、時間が経つとこういうくるくるっとした形になるんですよ。

山へときどき散歩に行くんですけど、ある時そこにこの作品と同じような状態の竹の皮が落ちていて。それを見て、この作品を作ってみようかなと思い立ちました。僕がいるのは禅宗の寺院なんですけど、禅と何か繋がるものがあるようにも思います。朽ちたものにも美が存在しているような。言葉で表現するのは難しいんですけど……。《樹皮》を作り始めたきっかけはそういうところです。

- では最後に、お客様へのメッセージを一言お願いします。

何かしら感じ取ってもらえると嬉しいです。もちろん、良いとらえ方をしてもらえると嬉しいですけど、「嫌い」でもいい。「この作品、好きじゃない」と思われてもいいです。とにかく、何も感じられないのが一番、作り手としては苦痛だと思うので。1点だけじゃなく、全ての作品を通して、何か感じ取ってもらえるものがあると嬉しいですよね。

岩佐昌昭さんコレクションページ:
https://store.hulsgallerytokyo.com/collections/masaakiiwasa